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映画評:「武士の家計簿」


 
面白くない、起承転結の物語展開がなくつまらないなどの悪評がいくつもネット上でみられるというので、夫婦そろって金沢の映画館へ出かける直前になって他の映画にしようかと迷いました。 しかしチャンバラが無く武士の家計・家事経済を めぐる時代劇・歴史物というユニークな分野を開拓している映画をやはり観ておきたいという気持ちが強く、当初の方針通りこの映画を観ました。
実際に観た上での感想は私自身はかなりおもしろかった。妻もとても良かったといっています。

生活苦から不正に走ったり汚職事件を起こす上司や同僚の中でひたすら実直に生きていこうとする姿や、膨れ上がっていく借金に対してついに一大決心をして、めぼしい家財道具をすべて売り払い家計の建て直しに取り組む際の家族各人の苦しみ悲哀。 生き方に対する個性と感情の違いからくる父と子の激しい葛藤など、いくつものドラマや事件が続いてくる。
面白くなかったというコメントのひとは、コミック原作の派手なアクションストリーや不治の病の少女とのドラマチックな悲恋物語とか、かなり単純明快なストーリ展開を好むタイプの人なのだろうと思える。
現代で言えば経理財務や調達機能をもつ部門の役人の家庭や職場風景を描くという点で固い雰囲気の映画になりそうだが 草笛光子、松坂慶子、仲間由紀恵などの豪華女優陣で華やかさや武家の矜持を持ちながらの家族愛などをうまく演出している。

実は筆者は7年前原作が新潮新書で発行された時(2003年4月)に入手して読んでいます。原作書では明治維新期に多くの士族が没落して悲惨な境遇に陥るなかで猪山家の一族がその能力才覚で激動の時代に対応していった状況が詳しく解説されている。 今の日本人や社会にとってはこちらの話題の方が切実かもしれない。
新しい時代の潮流に乗って大いに活躍していった士族と、そうでなかった士族家族の境遇の違いをどぎつく描いて時事問題につなぐわかりやすいテーマをとりあげれば、今回を上回るヒットになりそうな気がする。 そう考えると続編の作品を期待したくなりました。
                                          (2010年12月記)